カンパネルラの森

写真と言葉。

追憶の中で

和歌山の里山取材。
十津川での大水害。おばちゃんも流された。

何度となく泊めてもらってた民宿も流された。

ようきた ようきた! はよ上がれ。

あんたがいつ来よるか いつ来よるか

まっとたんじゃ。さあ はよ上がれや。

 

おばちゃん また きたぜ。

流された民宿の崖には蛍ぶくろうが

f:id:djmasahiro777:20230517013403j:image一面に咲いていた。

 

なにもせんでも勝手に咲きよるよ。

偉いもんじゃ ほんま偉いもんじゃ。

おばちゃんの声が聞こえる。

咲き誇る蛍ぶくろうが涙で滲む。

おばちゃん 来年もくるから、

さよなら 言わんわな。

 

心の中で繰り返しながらシャッターを切る。

きっと昔から、悠久の時のながれ 

毎年ここで咲き続け、だだ美しくしかし切ない。

僕の心が静かだが強く揺さぶられた一瞬。